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お米ができるまで
2012年05月01日
稲の育て方は二通りあります。
稲作は、「水田(水田稲作)」と畑で栽培する「陸稲」がありますが、1年を通して雨量の多い温暖地帯であること、陸稲よりも品質、美味しさに優れ、日本では手間暇をかけた水田稲作が多く行われています。
3月 よい種を選ぶ
種になる籾の中には十分実らなかったものも含まれるため、これを塩水の中に浸けて沈む充実した籾だけを選びます。(塩水選)
塩水の比重は1.13がいいといわれますが、生卵を塩水に浮かべたら浮かぶぐらいです。
次に種籾の消毒です。病原菌が種籾で伝染する、ばか苗病、いもち病、苗立枯病を防ぐことができます。
温水(温湯消毒)や農薬で殺菌して揃った芽が出るように準備します。
農薬を使わない、種子消毒法(温湯消毒)が浸透してきています。消毒よりも時間がかかりますが、環境、人にもやさしい方法です。
4月 種まきと苗づくり(播種)
種まき
育苗箱に殺菌した土をつめ、水に浸して1mmくらいの芽を出させた籾を、均一にまきます。
苗づくり
種播きした育苗箱を加温して、3cmくらいに芽を揃え、ビニールハウスの中で約3週間ほど育てます。
春先は天候が変わりやすいのでビニールハウスの温度管理や水やりに大変気をつかいます。
田植前の田んぼの準備
田植の前に田んぼに堆肥(発酵)や肥料をまいて均一になるよう耕します。
土づくり
発酵熱で湯気が出て熱いくらいです。
代掻き(しろかき)
田植えがしやすいように水を入れ面を平らにします。
【田んぼが水を溜められる理由】
雨が降ってできた水溜りは、時間がたてば蒸発したり土に吸収されて、水はなくなりますが、田はいったん水を溜めておくことができます。
もちろん、染み込まないわけではありません。水田は、地下水を涵養(かんよう)するという重要な機能を持っています。
水田の底(地下30cmくらい)には粘土でできた層があり、水が染み込みにくくなっています。
水田のまわりは畔(あぜ)という小さな土手があり、水の逃げるのを防いでいます。畦塗り(あぜぬり)
何度も稲作を続けると、この粘土層が強固になり水を溜める機能も高まります。
一度、休耕田にしてしまうと、再び田にするのは難しく、大切に守っていかなければなりません。
【必要な水を入れたり出したり】
あぜの横に作られた水路に川から水が引き込まれ、必要なときに必要な量だけ取りこむことができるように、水門で調節します。
水路から揚水が必要なところでは、モーターが使われていますが、昔は水車が使われました。(現役水車もあります)
現役で活躍している三連水車(福岡県朝倉市) 甘木朝倉観光協会
5月 田植え(移植)
5月の連休を中心に田植機で田植えが始まります。
長さ12cm程度の苗を一坪60~75株くらい植えますが、最近健康な稲にするために、疎植(37株植/坪)が増えてきました。
疎植の特徴は開帳型分げつ(株分かれ)した稲になります。
倒伏しにくい丈夫な稲に育ち、大きな穂をつけます。風通しも良く、太陽が株の根元まで当たり、光合成が促進され、デンプン生産が旺盛にもなります。
田植え後1週間程で苗は田んぼの環境に慣れて新しい根を出します。
春の強風や寒気の影響を受けやすいため、田んぼの水はやや深めにして苗を守ります。
田植えは殆どが機械で植えられていますが、田の端の方は手で植えなくてはなりません。特に機械が入らないような田んぼでは、かなりの面積を手で植えることになります。
6月 稲が育つ手助け
田んぼに根付いた稲は伸びると同時に分げつをして茎の数を増やしていきます。1本の苗の茎から5~6本の新しい茎が出てきます。
稲が育つのと同時に田んぼにはヒエなどの水田雑草が生え、雑草が増えると稲の生長を邪魔したり病気の原因になるため除草剤や除草機を使って抑えます。
分げつによって穂の数が決まるので田んぼの水を調整します。分げつか進み、茎が増えすぎ実に栄養が行かなくなるので、田んぼから水を抜き(中干し)、土の表面から水をなくします。土の中には今までの水が十分蓄えてありますから大丈夫です。
中干し
適期にきちんと実施すれば、無効分げつの抑制、新たな根の伸張促進と後期までの活力維持、土壌の通気性と有毒ガスの排除、倒伏軽減などの大きな効果があります。
7月 穂を育てる肥料を施す
稲の様子を見ながら充実した穂を作るため肥料を散布します。
この肥料のタイミングが悪いと稲が伸びすぎて倒れてしまったり、お米の品質に悪い影響が出ます。茎の中に穂の元になるものができる大切な時期です。
8月 病気や害虫から稲を守り開花を迎える
田んぼにはカメムシなど害虫やいもち病などの病気も発生しやすくなります。
害虫は米の品質低下の原因になり、いもち病は田んぼ全体が収穫できないくらいの被害が出る怖い病気です。
これらの病気や害虫を防ぐために日々田んぼを観察して病害虫の発生の初期に、一般的に最小限の農薬で防除します。
昔と同じように、稲を丈夫に育て、田んぼの周りの生き物を利用し、農薬を使わず栽培しているところもあります。(生物多様性)
2001年から環境省と農林水産省が連携して、農業用水路やため池などの農業水利施設の管理や整備を担当しているところの人たちが中心となり、田んぼまわりの生物調査(略称「田んぼの生きもの調査」)を実施しています。
今後、この調査結果を蓄積していくことにより、田んぼまわりの生態系の状況を把握するとともに、より良い田んぼまわりの生態系を保全し創り出す手法を作るために役立てることにしています。
開花
穂が出て一週間くらいすると稲の花が咲きます。受粉した稲はさらに一カ月半くらいで刈り取り時期を迎えます。
朝開いて夕方に閉じる白くて小さいかわいい花です。
受粉は開花時の一瞬で行われる自家受粉です。青いもみがパクッと割れ、受粉が済んだ「おしべ」はもみの外に出ます。
多いときで1本の稲に150個以上も籾がつき花が咲いて、米を実らせます。受粉後には胚が大きくなり、これが米となります。
受粉後の籾の中には、栄養分を含んだ白い汁がたくさん蓄えられています。この汁がカメムシなど大好物です。
薬の多量散布によって数が減ったといわれるトンボやクモは、害虫を食べてくれたり、アメンボやゲンゴロウは害虫を退治してくれる益虫です。そんな益虫がいっぱいいる田んぼ作りをしたいものですね。
【台風到来】
稲の受粉が終わって収穫期まで1ヵ月強(40日ぐらい)の時間が必要です。この時期は日本では台風がたくさんやってくる頃です。
稲の生育にとって水はなくてはならないものなのですが、梅雨と違って強い風と共にやってくる台風はうれしいものではありません。
稲の丈は品種によって違いますが、大体1メートル前後なので、強い風が吹くと倒れる可能性があります。
倒れてしまったものは、まだ若い稲の場合は自力で起きあがることもありますが、起こしてやらなければならないこともあります。
ただ、刈り取る寸前の稲の場合は少し早めでも刈り取ってしまいます。
ところが台風は多量の雨を同時に運んでくることが多くあり、稲が水浸しになると、台風が去っても稲刈りが出来ません。
たとえ刈り取ることが出来たにしても水浸しになった米には商品価値がなくなってしまいます。
【冷夏】
1993年に日本を冷夏が襲い、米の収穫が著しく下がって外国からたくさん米を輸入したことがあります。
- 遅延型: 低温と日照不足によって生育が遅れるものです。著しい被害では実の成熟不良となります。
- 障害型: 出穂の時期に一定以下の低温が続き受粉に障害が起こるもので、実の減収につながります。
- 混合型: 遅延型と障害型が混ざった障害
- いもち冷害: 低温によって稲の病気“いもち病”が発生し、収穫が減るものです。
稲は温帯地域で生育する植物なので、春から夏にかけて気温が10℃から20℃に移ることが重要で、その間温度が低いと十分に育たず、収穫の減少につながります。
9月~10月 稲刈り(収穫)
いよいよ籾らしい形になり、穂が垂れてきます。栄養を送り込んで使命を果たした茎と葉は、枯れて黄色(黄金色)に色が変わります。
田んぼが黄色に美しく色づくのは、役目を果たしたという稲の茎と葉からの知らせです。
稲穂が秋の日差しを浴びてきらきら黄金色に光るのを見たことがあると思いますが、これは稲穂には植物珪酸体(ガラス質細胞)があるためだともいわれています。
稲刈り
現在は刈取と脱穀(稲から籾だけを収穫すること)が一度にできるコンバインを使って収穫します。
稲を刈り取り、脱穀し、いらないわらを吹き飛ばして田んぼに戻し、機体の中に脱穀した籾を溜めてくれます。
コンバインが利用できない棚田など、山間地や小さな田んぼでは小回りがきくバインダーで刈り取り、ハーベスター(脱穀機)で脱穀します。田んぼの狭い角はバインダーでも無理なので手で刈り取ります。
乾燥
収穫したばかりの籾は25%くらいの水分を持っています。これを15%以下の水分まで乾燥機を使って乾かします。
籾すり(籾から玄米に)
乾燥させた籾は籾すり機で籾を剥して玄米をとりだします。
この玄米は籾の中で十分に実っているものと不十分なものが混ざっているので選別機にかけてよい玄米だけを選びます。
10月~11月 出荷
検査
玄米は30kgの袋に袋詰めされ資格を持つ検査員によって1等から3等までの等級が決められています。農産物検査法
出荷・貯蔵
その後、穀温15℃以下で60~65%(75%)程度の湿度に管理された倉庫に保管され、一年を通しておいしい状態で出荷されます。
本来は5℃がベストなのだそうですが、設備の完備やランニングコスト等を考えてのものです。
生産地にはカントリーエレベーターが整備されている地域も多く大きな貯蔵タンク(サイロ)で籾のまま貯蔵して出荷に合わせて籾すりして出荷しています。今擦り米
12月 土づくりや田んぼの整備
稲刈りが終わると田んぼに堆肥や土づくり肥料などを撒いて土や生き物を豊かにし翌年の春の準備をします。
冬みずたんぼ(冬期湛水)
冬に水を張った田んぼは昆虫や微生物、渡り鳥が生命をつなぐ場所となります。(朱鷺の餌場にもなります)
生き物たちが作ってくれる土から取れたお米は、強い生命力を私たちに授けてくれます。
お米マイスターのここがポイント
- 稲の生育には、6月~8月の水の管理と肥料のタイミングが大切です。
- 日中と夜間の気温差があるほどおいしい米になるといいます。
- 同じ品種・同じ地区でも稲の管理に手間ひまをかけるほどおいしいお米を実らせます。