ブレンド米
ブレンド米の進化
現在では、品種改良や栽培技術改良の成果から日本中どこでも良食味のお米が生産されています。しかし、米は年によって収穫量や品質に差が表れる作物です。
常に一定の味を保つためには、ブレンドして複数のお米を調整する技術も必要となります。
ブレンド米というと、「混ぜ物」「格上げ」など悪いイメージをもたれた時代もあったことと思いますが、現代のブレンド米は、目的をもって米職人が創作するものといえます。
たとえば、価格を抑える、年間を通して味を均一にする、食味を向上させる、特長を引き出すなどの目的があります。
それぞれのお米の特性を活かし、料理との相性を考えたおいしさを生み出すためには、単に複数の品種を混ぜるのではなく、ブレンドして調和させる独自の技術と目的が必要です。
ブレンドの役割
(1)食材を無駄にしない
価格を抑えることを目的としたブレンドでは、野菜でいうと曲がったきゅうりのような品位の規格に合わなかった規格外米や、農産物検査を受けていない米などを複数の原料米として使用します。
ちなみに、これらのお米はご飯以外にもせんべい、団子、味噌など昔ながらの加工食品にも使われる他、副産物としては、米ぬかから油や石鹸などの加工品にも利用されています。
ブレンドや加工によりお米は無駄なく活用されてきており、日本にはお米を大切に扱う食文化が根づいています。
(2)理想の食感と味の実現
おいしさを追求し目的に合う食味とするには、単一銘柄(ブランド米)では、細かな食感(硬さ、粘り)の調整が困難です。
いくつかの米をブレンドして調整することで「もう少し粘りを抑えたい」「もう少し歯ごたえがほしい」などの繊細な要望に応えることができます。
食感、粘り、硬さ、味を調整するには、ブレンド以外にも米自体を品種改良する方法がありますが、それには長い年月がかかります。ブレンドなら何年もかけることなく、目指すおいしさ(食感)をかたちにすることができます。
(3)味の調和を手に入れる
ブレンドとは、単一銘柄を足し合わせるのではなく、相乗効果を生み出す掛け算のようなものです。
これによって理想の味の実現に近づけることができるので、特定の料理に合わせてオーダーメイドのブレンド米を作ることも可能です。料理との相性を考慮することでお米の付加価値は無限に広がり、新しい味を作り出すことができます。
食味に関していえば、やわらかくて粘りのあるお米はすぐにご飯の味が感じられます。しかし、先にメインの料理を味わいながら、口の中でご飯の味と調和した方が、全体として料理がおいしく感じられます。
このように、ブレンドをするさいは、食べた人の満足感や料理と合わせたときにいっそうおいしく感じられるバランスを考える必要があります。
ブレンド技術の活用
(1)多岐にわたるブレンド技術
ブレンド技術は古くからさまざまな食品で幅広く活用されています。日本茶では、産地や品種、蒸し具合などが異なる荒茶の特長を見極め、ブレンド(合組)がされています。他には、コーヒーや紅茶、ハーブティー、ウイスキーにも用いられています。
味や香りを良くするために、それぞれ特徴の異なったものを混ぜ合わせてより良い製品を作っています。
種類 | 専門家 |
米 | お米マイスター |
コーヒー | J.C.Q.A.コーヒー鑑定士 |
紅茶 | ティーテイスター・ブレンダー |
日本茶 | 日本茶鑑定士 |
喫茶店でコーヒーを頼む場面を想像してみてください。モカ、キリマンジェロ、ブルーマウンテンなどたくさんの銘柄があってもブレンドコーヒーを注文することが多いのではないでしょうか?
コーヒーのプロがおいしさを見極めて作ったブレンドだから、「きっとおいしい」という期待感があるのだと思います。
(2)ブレンド技術の重要性
ご飯は炊いてから時間が経過すると食感が変化するため、食シーンによっては、冷めた状態での食感も考慮した配合が求められます。重要なのは、ベースとなる品種の選択です。
メニューの目的に合った原料米であるか、ブレンド米との相性を考えることが重要です。
「コシヒカリ」はやわらかくて粘りがありおいしいお米ですが、用途によってはもう少し歯ごたえがほしい場合もあり、水加減を減らしたり、粘りをもう少し抑えたりする工夫がされています。
おいしいお米を複数ブレンドしても相性が合わない場合があります。また、同一品種であっても産地や栽培方法などによる差異があり、それを考慮した選択が必要です。
日本の美味を堪能しよう
(1)ブレンドで品種を選ぶポイント
ブレンドするお米は2~3種類が一般的なようです。種類が多いほど安定しにくくなります。同系統同士や、「日本海側」または「太平洋側」の組み合わせもありますが、今では日本中でたくさんの品種が作付けされているので、相性は未知数です。
ブレンドの相性によっては、単一銘柄のお米よりも食味が向上する場合もあります。
最近では、低アミロース系の品種も増えています。これらをベースとなるお米にブレンドすることで、食味を向上させることは一般的なことです。
他にも、品種や産地の違いによって形状・比重・粒張りが異なってくることを考慮に入れてブレンドするお米を選定することがポイントです。
詳しくは、検査用語の解説をご覧ください(農林水産省)。
(2)ブレンドされたお米のハーモニー
ブレンド米は、冷凍食品やコンビニのおにぎりなど、さまざまな用途に合わせて作られています。背景には多くの人々の努力があり、農産物という自然の産物にも関わらず、一定の食味の提供と供給の安定を実現しています。
ブレンド米を開発する際には、お米の選定やブレンドの配合に数カ月もの時間をかける場合もあります。このように手間暇かけて生まれたブレンド米は、主役となる料理やメニューとの相性が抜群であり、まるで一流のオーケストラが奏でる音楽のような、素晴らしいおいしさのハーモニーを創り出します。
お米の産地銘柄を知り、その特性を理解することで、よりいっそうお米のおいしさを堪能できることでしょう。
お米マイスターのブレンド
お米を商品として販売する以上、「味を常に均一」にし、さらに「美味しく」なければならないと考えています。それには、「本来あるべきブレンド」を開発していかなければならないのです。
「食味分析の計測データ」や「長年培った精米技術」、「官能試験」、「お米の系譜」などをもとに、お米マイスターが「極良食味同士」のお米を配合します。このとき、それぞれのお米に足りないものを補うように配合し、「味の均一」、「美味しさ」を追求しています。
その結果として生まれるブレンド米は、異なる要素が絶妙に調和した至高の味わいを提供します。だからこそ、私たちは他では味わえない「お米マイスターのブレンド米」に自信を持っているのです。