お米マイスターの日誌

「令和の米騒動」~米不足の理由と背景~

2024年09月18日

2024年8月に入り、スーパーやネットなどでお米の在庫が次々となくなり始めました。お盆過を過ぎた頃からは、毎日のように「スーパーの棚からお米が無くなった映像」がメディアで報じられ、その報道がさらに米不足の状況を一層深刻にしました。

令和5年産のお米は、猛暑の影響による品質低下(等級の低下や歩留まりの減少)や、南海トラフ地震への備え、インバウンド消費の増加、生産調整による減少などが原因として報じられています。しかし、これらの生産や流通の問題以上に、根本的な原因は「米の消費が半分以下に減少し続けている」にあると考えられます。

「米の消費」半分以下

昭和40年頃と比較すると、現在の1人当たりの年間米消費量は約半分の50.9kg(1人/年間)まで減少しています。1970年から2017年にかけて、お米が余るようになり、米価を維持するために国は米の生産量を調整して転作を推進してきました。減反政策が廃止された後は、農家は自主的な経営判断で米を作れるようになりましたが、米の消費量は依然として減少し続けています。

このまま米の消費が減り続け、農家の高齢化や耕作放棄地が増加してしまうと、3000年以上もの間、日本の文化と生活を支えてきた稲作文化が衰退してしまう可能性があります。

これは日本の豊かな食文化や農業遺産を守る観点からも非常にもったいない事態です。持続可能な農業を維持するためには、私たち一人一人が米の大切さを再認識し、米の消費を見直すことが重要です。

端境期(新米への切り替え)

お米は、1年に1回しか収穫されません。春に田植えをして、秋に収穫されます。(※沖縄 2期作)

通常、新米が9月に出回り始めるので、古米にならないよう仕入れ計画を行っています。しかし、在庫が少なくなる端境期に、多くのメディアが連日「米不足」を取り上げたことで、消費者の不安が高まり、必要以上にお米を買い求める動きが見られました。

その結果、スーパーの棚からお米が次々となくなり、不足感がさらに広がりました。消費者は普段購入していない店やネットショップでお米を探し、新たな需要が増加したことで、在庫のある店でも予定していた供給量を超える状況が発生しました。

一方で、大手外食チェーンや飲食店、コンビニのおにぎりやお弁当(業務用)などは、「年間契約」によって必要な量を確保していたため、ごはんが提供できなくなることはありませんでした。

令和5年産の作柄

作況指数では101で例年並みではありますが、高温やフェーン現象の影響を受け、1等級比率の大幅な低下(新潟コシヒカリ4.7%)が見られ、精米歩留まりも落ちてしまい、そのため、より多くの原料が必要になりました。

さらに、収穫したお米が集まりにくくなり、年明けには要望数量に対して、十分に用意できず、数量が削減されるお米もありました。春頃から特に「価格の安い」お米の在庫が減少し、スーパーやドラックストアの棚からお米が徐々に消えていく状況となりました。

今後の見通し

今年は生育が順調に推移しているため、令和5年産のような作柄にはならない見通し(9/18現在 新潟コシヒカリ1等比率  87%以上)ですが、米不足の影響でお米がさらに集まりにくくなる可能性があり、そのため価格上昇の一因にもなっています。出荷される量が減少すると、卸販売業者や米穀販売店の入荷数量が減ってしまい、年間契約数量の縮小せざるを得ない事態が懸念されます。

消費量が減少している中で、せっかく、お米を求めている消費者に対して十分が供給ができなくなるのは非常にもったいないことです。

新米が出始める9月になるとメディアでお米の特集が組まれることが多く、早く新米を購入したいという消費者の期待が高いですが、今はお米の保管がしっかり管理されているため、前年産のお米も10~11月までは十分おいしく食べられます。少し待っていただけることで在庫の余裕が生まれ、安定した供給が可能になります。

お米の消費拡大

お米の生産量を増やすためには、普段から一人一人がごはんを食べる量や機会を増やすことが最も効果的です。今回の騒動で日本の食卓を支えているお米の大切さを改めて知り、食べることで農業を応援していただければと思います。

●お米の保存方法

高温多湿な環境では、お米に虫や風味が損なわれる原因に。さらに秋の長雨で湿度が高い日が続くと、お米にカビやにおいが発生しやすくなります。

おいしさを保つためには冷蔵庫で保管が良いです。特に冷蔵庫の野菜室に保管するのがベスト。臭い移りを防ぐため、密閉容器・ストックバッグに入れてください。お米には賞味期限はありませんが、1か月くらいを目安に使い切りましょう。

詳しくはこちら(金子商店ホームページ>お米への取り組み)