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食品と放射能Q&A(お米関連抜粋)
2011年10月22日
消費者庁は放射性物質に対する一般消費者向けの啓発冊子「食品と放射能Q&A(PDF)」を作成、5月30日から公開され、お米に関するところを抜粋しました。
食品と放射能Q&A(最新版10月21日付)
放射能の基礎知識・人体への影響
放射線、放射能、放射性物質はどう違うのですか。
「放射線」は物質を透過する力を持った光線に似たもので、アルファ(α)線、ベータ(β)線、ガンマ(γ)線、エックス(X)線、中性子線などがあります。
放射線はこれら種類によって物を通り抜ける力が違いますので、それぞれ異なる物質で遮ることができます。
放射性線の種類と透過力
アルファ(α)線 |
紙 止まる |
ベータ(β)線 | 紙 → アルミニウム等の薄い金属板 止まる |
ガンマ(γ)線 エックス(x)線 |
紙 → 金属板 → 鉛、厚い鉄の板 止まる |
中性子線 | 紙 → 金属板 → 鉛 → 水やコンクリート 止まる |
この放射線を出す能力を「放射能」といい、この能力をもった物質のことを「放射性物質」といいます。
懐中電灯に例えてみると、光が放射線、懐中電灯が放射性物質、光を出す能力が放射能にあたります。
一般に「放射能漏れ」とは「放射性物質漏れ」のことであり、放射線を出す放射性物質が原子力施設の外部に漏れ出すことです。
放射線は人体へどんな影響を与えるのですか。
人体は多くの細胞からできており、健康な細胞は細胞分裂を繰り返しています。一度に大量の放射線が細胞にあたると、細胞が死んだり細胞分裂が遅れます。
このため、細胞分裂が盛んな組織である造血器官、生殖腺、腸管、皮膚などに一度に大量の放射線を受けた場合、数週間以内に障害が起きることになります。
少量でも長期的に一定量の放射線を受けることで、造血器官などの細胞の中のDNAなどの遺伝物質が損傷し、修復能力が追いつかず、がんや白血病などになることもあります。これらの病気が発症するかどうかや、発症時期は人によって差があります。
こうした放射線の影響は、大人よりも細胞分裂が活発な乳幼児・子ども・妊産婦(胎児)のほうが受けやすくなります。
放射能の単位「ベクレル」と「シーベルト」はどう違うのですか。
全ての物質は、原子が集まってできています。その中心には原子核があり、その回りを電子が回っています。
放射線は、ある特定の原子核が別の原子核に変化(崩壊)する際に放出されます。
1Bq(ベクレル)は、1秒間に1個の原子核が崩壊して放射線を出す放射能の量で、数値が大きいほど、放射線を放出して崩壊する原子核の数が多いことになります。
ただし、放射性物質の種類によって放出される放射線の種類や強さが異なりますので、同じ1000Bq(ベクレル)の放射能を有していても、放射性物質の種類が違えば、人の体に与える影響の大きさは異なります。
そこで、人間が放射線を受けた場合の影響度を示す共通の単位が別にあります。これがSv(シーベルト)です。
計測結果が同じ1Sv(シーベルト)であれば、人体に与える影響の程度は同じだということになります。
Bq(ベクレルと)Sv(シーベルト)は以下のように換算できます。
(例1)
500Bq/㎏の放射性セシウム137が検出された飲食物を1㎏食べた場合の人体への影響
500×1.3×10-5乗=0.0065mSv となります。
(例2)
300Bq/㎏の放射性ヨウ素131が検出された飲食物を1㎏食べた場合の人体への影響
300×1.6×10-5乗=0.0048mSv
注:μSv(マイクロシーベルト)は、Sv(シーベルト)の1/1,000,000になります。
実効線量係数(mSv/Bq)
放射能の単位であるベクレルから生体影響の単位であるmSv(ミリシーベルト(シーベルトの1/1000))に換算する係数。
核種(放射性物質の種類)、化学系、摂取経路別に国際放射線防護委員会(ICRP)などで示されています。
上の例では原子力安全委員会の指針(発電用軽水炉施設周辺の線量目標値に対する評価指針)で示された数値(経口摂取・成人)を用いています。
なお、同指針では、ヨウ素(131)については、成人のほかに幼児及び乳幼児向けの係数がそれぞれ、7.5×10-5乗、1.4×10-4乗と示されています。
食品の暫定規制値が定められた放射性物質には、どんな種類がありますか。
厚生労働省が食品中の放射性物質に関して定めた暫定規制値の対象とした放射性物質は、「放射性ヨウ素」、「放射性セシウム」、「ウラン」、「プルトニウム及び超ウラン元素のアルファ核種」の4つです。
食品安全委員会が3月29日に公表した「放射性物質に関する緊急とりまとめ」では、これまでのチェルノブイリ原子力発電所などにおける災害の知見からも、今回の福島第一原子力発電所の事故において緊急に検討すべき物質として、放射性ヨウ素(ヨウ素131)と放射性セシウム(セシウム134・137)をあげています。
厚生労働省が公表している食品中の放射性物質に関する情報でも、ヨウ素131、セシウム(134・137)について、検査結果をまとめています。(米関連を抜粋)
放射性物質 | 暫定規制値 | 単位:㏃/kg) |
放射性ヨウ素 | 飲料水 | 300 |
放射性セシウム | 穀類 | 500 |
ウラン | 穀類 | 100 |
プルトニウム 及び超ウラン元素のアルファ核種 |
飲料水 | 1 |
穀類 | 10 |
食品の放射性物質に関する規制
暫定規制値は海外と比較して違いがありますか。
放射性核種に係る日本、各国及びコーデックスの指標値(単位:㏃/kg)
放射性セシウム134・137 穀類のみ |
|
日本 | 500 |
コーデックス | 1,000 |
シンガポール | 1,000 |
タイ | 500 |
韓国 | 370 |
中国 | 260 |
香港 | 1,000 |
台湾 | 370 |
フィリピン | 1,000 |
ベトナム | 1,000 |
マレーシア | 1,000 |
アメリカ | 1,200 |
EU | 500 |
米の安全性
お米はきちんと検査されるのでしょうか。
8月3日に農林水産省は、「米の放射性物質調査の基本的な考え方について」を公表しました。
米は国民の主食であり、さまざまな特色を持ちます。摂取量が多く、野菜等の他品目より生産量が多く、長期保存が可能です。
また、生産農家数も極めて多く、農家による直接販売等を含め多様な流通形態を持っています。
このため、まず、生産された米の放射性物質が食品衛生法の暫定規制値値を超える可能性の高い地域については、4月に作付制限を実施しています。
それ以外の地域で土壌中の放射性セシウム濃度が比較的高い市町村等では、収穫前の予備調査、収穫後の本調査の二段階で、放射性物質の調査が行われます。
予備調査の結果、放射性セシウムの濃度が一定水準(200Bq(ベクレル)/㎏)を超えた市町村においては、本調査で重点的な調査を行います。
作付面積で概ね15haに1点(概ね集落毎に1点に相当)を試料採取するなど、入念な検査を実施することにしています。
本調査の結果、暫定規制値を超える放射性セシウムが検出された場合、市町村(又は旧市町村)単位で、その地域の全ての米について出荷制限されることになります。
出荷制限が行われた場合、米は一年一作のため、平成23年産米については出荷制限の途中解除は行われません。
さらに、米穀の出荷販売事業者が遵守すべき事項を定める省令に基づき、出荷・販売が禁止され、廃棄処分が義務付けられます。
平成22年産以前のお米は、今回の原子力発電所事故の前に収穫され、貯蔵していたものです。
このようなお米は、事故の発生後も屋内で適切な管理の下に貯蔵されている限り、放射性物質を含むガスやチリを浴びることはありません。
食品と放射能Q&A(消費者庁)