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「令和の米騒動」第2弾 ~分散化する流通、見えなくなるお米~
2025年05月27日
2025年5月現在、米不足の状況は依然として続いており、価格も高騰したままです。
昨年(2024年9月)に「令和の米騒動(第1弾)」と題して、米の消費減少や流通の構造的課題について投稿をした後、政府は対応策として備蓄米の放出を決定しました。
今回は、お問い合わせも多く、その続編として、現在も続く米不足の背景や課題を、より具体的にお伝えしたいと思います。
一時的な供給緩和が期待された備蓄米ですが、価格が高騰し続けることは抑えられるものの、産地や品種、年産が指定できないため、特定銘柄にこだわるお客様への補充にはつながりにくいのが実情です。
すでに売約済み・契約分を除いた“余裕”のあるお米の市場流通量は少なく、価格が落ち着く見通しは立っておらず、今年秋に収穫される令和7年産についても、引き続き厳しい状況が予想されます。
また「備蓄米がなかなか家庭に届かない」といった声もありますが、よく誤解されているのは、備蓄米が1か所に大量に政府保管倉庫で保管されているわけではなく、実際には各産地に分散して保管されていることです。これらを一斉に迅速に流通させるには、どうしても時間がかかってしまいます。かつては政府備蓄米倉庫(12か所)が存在していましたが、現在は廃止され、民間倉庫に委託保管されています。備蓄米は全国約300か所の民間倉庫に分散して保管されています。(※2025年2月FNN報道より)
たとえば、10万トンの備蓄米を動かすには、10tトラックで約1万台分に相当する輸送力が必要になります。(※1台あたり10トン積載として計算)。
物流インフラや運転手不足を考えると、より多くの時間と調整が必要です。
加えて、備蓄米を精米や包装・出荷するための袋の調達(製作)、配送などの工程も必要であり、最終的に消費者の手元に届くまでには、さらに時間と手間がかかります。
📉表面的な対策では解決しない
政府の備蓄米放出によって価格が落ち着くかのような印象も一部にありますが、実際には価格は高止まりしています。
農林水産省のPOSデータによれば、2025年5月26日時点で店頭米価は15週連続で高値を更新しています。(出典:農水省「スーパーでの販売数量・価格の推移」)
スーパーでの販売数量・価格の推移(POSデータ全国)(PDF : 564KB)
これは、備蓄米の放出という「一時的な対応」では、現在の複雑な供給構造や需給バランスの変化といった根本的な問題を解決できていないことを示しています。
報道では、”どこが悪いのか”といった論調も見られますが、農協、集荷業者、卸、小売といった流通関係者の誰もが、既存のお客様のご要望に真摯に向き合い、それぞれの立場で最善の対応をされていると感じています。今回のような混乱は、構造的な課題や外部要因が重なった結果であり、誰か一者を責めて解決できるものではありません。
🔍今回の米不足を招いた6つの要因
- 需給バランスの変化
お米の年間消費量は1960年代の半分以下となり、年々減少を続けています。そのため、かつては余剰だった量でも、今ではわずかな不作が市場全体に影響を及ぼすほど、需給バランスは非常にタイトになっています。 -
令和6年産の不作・品質低下
記録的な猛暑と雨不足の影響で、地域によっては収穫量が大幅に減少。また品質にも影響が出たため、精米時の歩留まりも低下し、その分原料である玄米も必要になってしまった。📌 「歩留まり」とは?
たとえば、玄米10kgを精米して白米が約9kg取れた場合、歩留まりは90%となります。ところが、これが 89%、88%、87%と下がってしまうと、同じ量の白米を得るために、それだけ多くの玄米が必要になります。これは、精米の際にぬかや胚芽が削られるだけでなく、高温障害で未熟となったお米が粉状になってしまうことで、白米として残る量が減ってしまうためです。 -
2024年の“特需”
インバウンド(訪日外国人)の回復による外食需要の急増、そして夏に南海トラフ地震の臨時情報が出され、家庭での備蓄需要が高まりました。在庫が最も少なくなる8月に需要が集中したことで、品薄状態が一気に深刻化しました。 -
新米の前倒し消化
秋に新米が出回ったことで、一時的に米不足は解消されたかに見えましたが、実際には不安感から需要が前倒しで集中し、本来12か月かけて流通させるはずのお米が、前倒し(2か月分くらい)となりました。 -
生産者からの販売先の多様化
近年では、生産者がふるさと納税の返礼品や、既存の得意先、新規事業者などの販売が増え、その結果、農協(JA)などの集荷業者に集まるお米の量が減り、流通全体での確保が難しくなっています。 -
農業コストの高騰と離農
肥料や燃料、輸送費、機械メンテナンス費用など、生産者のコスト負担は年々増加しています。価格に転嫁できない状況が続く中で、採算が合わず生産を縮小する農家、高齢化で離農を選ぶ生産者も増えているのが現実です。
🧱混乱の背景にある“流通の土台”の揺らぎ
今回の米不足において、大きな引き金となったのは、農協(JA)に予定していたお米が集まらなかったことだと思います。
本来、農協を通じて流通に乗るはずだったお米が集まらなかったことで、その後の卸・小売・外食産業への供給計画にも大きな影響を及ぼしました。
この「集まらなかった」背景には、記録的猛暑や雨不足といった天候要因に加え、価格の上昇や農業コストの増加、生産者の販売先の多様化など、複数の要因が複雑に絡み合っています。
分散すればするほど価格や流通が不安定になり、結果としてその先の全農、卸、小売の供給にも大きな制約が生じてしまいます。
さらに、最近の風潮として「誰が悪いのか」といった議論に終始してしまう傾向も見られます。しかし、今回のような混乱は、あくまで構造的な課題と外部要因が重なった結果であり、誰か一人を責めても本質的な問題は解決しません。
たとえば、予定していた集荷量が3割減ってしまうと、流通段階で供給量を削減せざるを得なくなります。その結果、販売計画に基づいて準備していた商品量が不足し、小売では数量制限、飲食店など業務用では「2か月分供給できません」といった対応が現実に起きてしまいます。その場合、不足分を補うためには、別ルートでの確保や価格を引き上げての調達を余儀なくされ、さらなる混乱やコスト上昇を招く要因にもなり得ます。
📦流通制度の自由化と数量把握の難しさ
1994年の食糧法改正によって、米の流通制度は大きく変わりました。
それまでは国による流通管理が中心でしたが、法改正以降は誰でも米を販売できるようになり、流通の自由化が進んだ一方で、全体として「どれだけのお米が、どこに流れているか」という数量の把握が難しくなっているのが現状です。
本来、自由化は多様な販路の確保や生産者の選択肢の拡大という点で意義ある取り組みではありますが、今回のように生産地からの集荷量が大きく変動すると、農協を経由したルートに依存していた業務用や契約先などに、深刻な供給不足が生じるリスクが現実化しています。
🔁混乱を 繰り返さないために
規制緩和を元に戻すことは現実的ではありませんが、今回の事態を通じて「農協に集まらないことで米の流通が大きく混乱する」ことを社会全体で再認識すべきだと考えています。
現状の供給不足の中では、農協の仮払金(買取価格)が報じられると、集荷業者がそれを上回る価格で買い取る動きが広がり、さらに農協側も価格を引き上げなければ十分な集荷量を確保できないという競争状態が生まれています。これが今回の価格高騰にもつながっていると考えられます。
野菜や魚は、市場や漁港といった集荷拠点を経て流通していますが、お米の場合、集荷から精米、販売までの流れが分散化しているため、全体の連携が乱れると混乱が起きやすくなります。
今後、不作や震災などのリスクが再び発生した場合、同様の混乱が繰り返される可能性があります。
だからこそ、本来の農協組織のように、生産者と農協がタッグを組み、生産者が安心して農協に出荷できるような仕組みを取り戻すことだと思います。農協と生産者だけの問題ではなく、流通業者も農協・生産者と情報を共有し、例えば、自分の作ったお米がどこで食べられているのかを知ることで、誇りと安心感を持てるのではないかと思います。
🍚お米を食べることから始めよう
そして何より、持続可能な農業と安定した米の供給体制を守るためには、「ごはんをもっと食べる機会を増やすこと」、目安としては、1日2合です。(※現在は約1合程度)
理想のエネルギー産生栄養素バランスは、炭水化物60%、脂質25%、たんぱく質15%です。それを1日2000キロカロリーの場合、お米の量にすると約2合、男性の場合は約3合となりますので、健康的にも良い食事の内訳になると思います。
(厚生労働省:日本人食事摂取基準2025版より)
・エネルギー産生栄養素バランス
・推定エネルギー必要量 参考表2 男女:18~74歳 身体活動レベル ふつうから計算
✍ 最後に – 田んぼと食卓をつなぐために
分散化が進み、見えにくくなった現代の米流通において、いま一度「つながり」を取り戻すことが重要です。
課題の本質を見つめ、未来のための一歩を踏み出すこと。
そして、 食卓から田んぼを支える という意識を、日常のなかで少しずつでも持ち続けていくこと。
それが、これからの日本の米づくりと農業を守るための、私たちにできる確かなアクションだと思います!